むし

 

 

虫を一匹殺した。


ちぃちゃい、肌に付いても一切気が付かないような虫を、殺した。

 

本当は今日、三匹目くらい。

 


虫を殺したら死刑という法律があったら、私は今、この虫を殺さなかったんだろうか。そりゃあ殺さないだろうね。

 


それでも、私を死刑にしてくれないかな、と思いながら、虫を殺した。

 

自分は生かされることを知っているから。

 


なんて残酷なのかしら。
私も、人間そのものも、一番生きる価値の無い物体が、生き物の王者のような顔をして、ふんぞり返って生きている。想像をすると酷く滑稽で、情けない。

 

 


明日の事を考えて落ち込む事が減った。良くも悪くも、期待がどんどん薄まっていく。不安を見て見ぬフリをしている。

 

いつかツケが回ってこなきゃいいけれど。