消えるというのは恐ろしい。
鉛筆で書いた文字は、消されてしまうかもしれないので、不安。
携帯電話のフォルダに入ってあるだけの画像は、消えてしまうかもしれないので、ヒヤヒヤする。
数年前に聞いた友人の声は、思い出せそうで思い出せない。
言葉は文字にしないとすぐに逃げて行く。
漠然とした思い出は、いつのまにか書き換えられてしまう。
一人でいるこの時間に、空間に、殺されそうになる。沈黙の中で、誰に気付かれることもなく。
いつまでもしがみ付いていたい。
自分の脳に、心臓に、地面に、地球に、宇宙に、ありとあらゆるものに、しがみ付いていたい。