人生の旅をゆく

 

 

最近、よしもとばななさんの本を読んでいる。よしもとさん、なのか、ばななさん、なのか、よしもとばななさん、なのか、ファンの人たちは彼女の事をどう呼んでいるのかわからないけれど、とても素敵な方で、今じわじわと影響を受けている。

 

 

よしもとばななさんの本に出会ったのは二年前、タイに住んでいた友人に会いに行った時のこと、その友人が「日本の本が置いてある古本屋に行きたい」と言うのでそれについて行ったのがきっかけだった。帰りの空港で、時間潰しに何か読むものをと思って見つけたのが、『人生の旅をゆく』という本だった。

 

結局その時は少し読んだだけでその後長らく放置してしまったのだけど、この前そういえばと思って改めて読み出したらすっかり魅了されてしまい、そのあとすぐ焦る様に本屋へ行って別の本を4、5冊買い足した程だった。

 


彼女の(日本語でそのまま"彼女"と言うと敬意が削がれてしまう印象があるけれど、英語のイメージのつもりで使っている)、考え方やそれを基にした生き方、その人生を表現する文章などが本当に素敵で、言葉ひとつひとつにその場その場の色んな感情が込められていて、見栄や裏表がなく、いい意味でとても生々しい。その生々しさが素晴らしくて、私も一緒に泣いてしまったり憤ったり考え込んだり心が温まったり、しているのである。

 

彼女の言葉を読んでいるととても落ち着く。綺麗だけれど自然で、真っ直ぐで、それでいて独特で、世界が広くて、だけどいつもフワッと隣にいるかのような、そんな美しくて安らげる空間が、この小さい一冊の中に詰め込まれているの。子どもにとっての絵本のように、私にはこの一冊の本が、楽園のように感じる。

 

 

彼女の本は沢山出ているので、一冊ずつゆっくり、噛み締めながら、時折縋るように、読んでいこうと思う。

 

 

 

 

そもそもタイに行かなかったら、そもそもその友人と仲良くなっていなかったら、あの学校を選んでいなかったら、更に遡ってうんぬんかんぬん、私はこの人生の、この今の時期の、無くても生きてはいけるけれど、有ることでパズルの何百というピースの中の一つがスッと埋まるような、時折アルバムを捲って思い出す懐かしい記憶のような、小さくて大きい幸せは得られなかったのだと思うと、あぁ全てが繋がっていてよかったなぁと、しみじみ感じるのである。