小雨の夜に

 

小雨が降っている。

 

 

ちょっとした知り合いと軽くお酒を飲みに行った。

「今日は夜から雨だそうですよ。」と彼女が言う。

夜というのが5時なのか6時なのか、それとも10時なのか深夜なのか、確認をしておいてもよかったなと思う。


21時前、最寄りの駅に着く。

車窓から見た様子だと、雨は降っていない。


やはり晴れ女だ。

そうだ、本屋へ寄ろう。

私はそう思い、15分の道のりを、傘無しで歩くことにした。

 

 

外へ出ると小雨が降っている。

だが小雨というのは、私の中では雨の内に入らない。(だから当然私の概念上の晴れ率が上がる)

これは大丈夫だ、と歩き出す。

 

しかしどうだ、微かにではあるが確かに、少しずつ雨の量が増えていくではないか。

顔と腕しか外に出ていない肌にも徐々に水滴が感じられ、おやっと思うがまだ動じない。

 

なぜなら私は晴れ女だからだ。

雨季の先月一ヶ月の旅行中、雨が降ったのはたったの二度切りだったではないか。(それもたった束の間)

朝から晩まで降水確率100パーセントの中、晴れ間さえ見える空の下で動物園に行ったこともあったではないか。

そうだ、恐れることはない、私は晴れ女なのである。

 

 

しかしながら私の自信がどんどん漲っていくのと張り合うかのように、雨はどんどん大降りになっていく。

 

 

 

(自信過剰もよくないかな)

 


という思いが増すのに伴い、私の歩幅も大きくなっていく。自然というものは全く薄情だ。

 

私は走った。

灯りの少ない、雨宿りの屋根などない、まっすぐな一本道を、ただひたすらに走った。向かいからくる車のライトはこちらに一瞥を投げるも、皆一様に、無情に通り過ぎて行く。

 

たった1.5キロメートルの道のりが永遠に思える。

 

 

走れ、走れメロス

そうだ、メロスもこんな気持ちだったに違いない。

走れ、走るんだ。

 

 

 

 

そうして私は、恐らく記憶の上では小学生ぶりに、全身に大雨を浴びながら、目的の本屋へと辿り着いたのである。

 

 

 

 


と、併設しているカフェで休み休み書いている間に服も乾いた。さて、本を見に行こう。